平成26年の労働安全衛生法の改正により平成28年6月1日から業種、事業規模にかかわらず化学物質の製造・取扱いを行うすべての事業場において、新たに取り扱う化学物質のリスクアセスメント(RA)の実施が義務化されました。
対象となる化学物質は、人に対する一定の危険性又は有害性が明らかになっている労働安全衛生法施行令別表第9に揚げる化学物質(通知対象物:平成28年6月1日時点で640物質、平成29年3月1日から27物質追加、平成30年7月1日から10物質追加で現在は672物質)で、歯科領域ではインジウム及びその化合物、銀及びその水溶性化合物、クロム及びその化合物、コバルト及びその化合物、シリカ、ジルコニウム化合物、すず及びその化合物、銅及びその化合物、ニッケル及びその化合物、白金及びその水溶性塩およびメタクリル酸メチルの11物質です。「日歯発第1535号 平成27年11月20日」
平成26年4月から「歯科用CAD/CAM(Computer Aided Design / Computer Aided Manufacturing)システムを用いたハイブリッドレジンブロックによる歯冠補綴」が保険改訂により適応となっており、当初は株式会社ジーシー「セラスマート」のみ歯科切削加工用レジン材料として認可されていましたが、以降他社でも新たに開発され認可・発売されています。
厚生労働省の報告ではCAD/CAM冠の届出をしている歯科医療機関数は平成26年:19,793件、平成27年:34,339件、平成28年:41,095件と年々増加しています。
今後歯科医療のデジタル化に伴い新規材料の出現が予想されますが、少なくともCAD/CAM冠を取り扱う歯科医院や歯科技工所等では化学物質のリスクアセスメント(RA)が必要と思われます。
日本呼吸器学会誌では平成14年に「歯科技工士における塵肺症の1例」、平成16年に「じん肺症と診断した歯科医の1例」と相次いで報告されており、平成30年3月には米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)が毎週報告している感染症情報であるMMWR(Morbidity and Mortality Weekly Report)に「Dental Personnel Treated for Idiopathic Pulmonary Fibrosis at a Tertiary Care Center — Virginia, 2000–2015」で肺の組織が硬化し、うまく酸素を取り込めなくなる難病【特発性肺線維症(IPF)】の発症が、歯科医院で働く人に多い可能性があると報告しています。
法令を遵守し化学物質のリスクアセスメント(RA)を行うことによって、日常使っている化学物質の危険・有害性を知り歯科医療従事者の現在のみならず将来の健康障害の予防をしましょう!
※より詳細なリスクアセスメント(RA)手法の導入又はリスク低減措置実施に当たっての技術的な助言は『化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針』に記載があるように、労働衛生コンサルタント等の専門家の活用を図るようにしてください。
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